Asma NOTE

Years of rambling from a midlife otaku.

地雷は、目に見えないところに潜んでいる……

「Tears of Time」シリーズは、20 世紀末から 21 世紀初頭にかけて、数多の歴史文献から掘り起こされた化石 のような作品たちだ。恥力の限界を突破したのち、「若さ故の過ち」との反省を込めつつ、自分で記録して世に出したものでもある。


都庁ビルがそびえ立ち、最も賑やかで刺激的な繁華街もここにある。健全で明るい若者たちは、好きなゲームソフトを手に入れることができ、堕落の淵にいる者たちも、欲しいものは何でもここで手に入る。全国のエリート中のエリートはここで日本の経済を支え、逆にこの経済の荒波に飲まれた者たちも、街の片隅に自分たちの居場所を見つけることができる。

新宿はまるで、いつでも両腕を広げて迎える娼婦のようだ。過去に訪れた者も、これから訪れる者も、すべて平等に受け入れ、最も公平な庇護を与える。そして、この地雷のように衝撃的な漫画作品は、まさにこの舞台を出発点として描かれる……。

《地雷震》の物語は、新宿署の刑事・飯田響也を軸に進む。その中に登場する人物たちは、主人公自身も含め、心理的にどこか欠けた部分を抱えていることが多い。飯田が体験する事件は、読者の目から見ると、まるでひとつの図像的な心理学研究報告のようだ。次々と起こる事件は、さまざまなタイプの偏執症の人物のサンプルといえる。彼らの行動は、必ずしも「物理的」に他人を傷つけることだけを目的にしているわけではない。しかし、共通しているのは、ある反社会的な行為を通して、自分の信念を示そうとしている点だ。

しかし、矛盾しているのもここだ。「自分を証明する」必要があるということは、すでに自分自身に疑念を抱いているということを意味している。物語の主人公・飯田響也は、犯人(そして読者)の前で、決して正義の味方を演じてはいない。もし今日、私たちが「犯人」を欠けた、不完全な存在と認識するなら、飯田が物語の中で行う任務とは、この不完全さを見つけ出し、その欠点に対して「痛烈な制裁」を下すことに他ならない。

実のところ、少し残酷ではあるが、飯田は人の心の弱点をえぐり出す力を持っている。そして、徹底的に冷徹な性格もまた、その能力を支える条件となっている。彼は鋭利な刃物で他人の古い傷を抉り出すが、その「古い傷」とは、犯人たちが自分自身の『信念』に抱く疑念そのものなのだ。

厳密に言えば、飯田と彼がかつて潰した相手たちは、本質的にはほとんど変わらず、同じ類の存在である。ただ、彼が集中すると彼の職業が「たまたま」社会の通常運営を害さないだけだ。なぜそうなのか?今のところ、私たちにはまだ見えていない……。

『地雷震』に登場する「悪人」たちの犯行動機は、もしかすると私たち平凡な人間が抱いたことのある考えそのものかもしれない。ただ、平凡な生活の中では、それを行動に移すだけの力やきっかけが欠けているだけだ。彼らにその「非凡な」思考を実行する能力があるのは、過去の経験や生活背景、育った環境などの影響によるものである。

もしかすると、あなたもかつて「正義」に憧れを抱いたことがあるかもしれない。しかし現実社会は、その幻想を打ち砕いてしまう。あるいは、かつて自分に敵意を向ける誰かに殺意を抱いたことがあるかもしれない。しかし私たちは、自分のこれからの生活や、周囲の人々の生活を考える――そんな思いは、時が経てば、取るに足らない笑い話にすぎなくなる。だが、それはあくまで平凡な人間の場合だ。平凡な人間は、生活の別の瞬間に新たな目標を見つけることができる。

もしある小さな男の子が、小さいころから外面は立派で、口先だけの道徳を振りかざす実の父親にレイプされ続けて育ったとしたら、あなたはその子が、簡単に「正義」を許せると期待できるだろうか?親子の情に何らかの希望を抱くことができるだろうか?あるいは周囲の人々に、少しでも残る信頼を寄せることができるだろうか?

この作品は、こうした手法によって、人間の心の暗部に潜むあらゆる可能性を描き出している。

造反には(もしかしたら本当に)道理がある(かもしれない)!

作者は私たちにこうした認識を繰り返し植え付け、作品の中では「希望」のかけらすらほとんど見えない。そして最も恐ろしいのは、読者である私たちも、反論する理由を見つけられないことだ。この状況が徐々に変わり始めるのは、飯田の元相棒・八巻刑事が事故で亡くなり、新しい相棒・相澤江理子が登場してからだ。

八巻は力のない平凡な人物で、飯田と一緒にいるときも、ただ飯田の付属品にすぎず、このキャラクターからは生命力を感じることはできない。しかし、相澤という平凡な女性は、飯田の輝きにかき消されることがない。彼女には飯田が持つ超人的な特質はないものの、人の心に潜むあらゆる「前向きな可能性」を持っており、その「可能性」こそが強い力を持つ。これは、飯田や彼と関わったすべての人々とはまったく逆の人格特質である。最も重要なのは、彼女は飯田よりもはるかに多くの「人間性」を備えていることであり、平たく言えば、正義感にあふれ、堂々と生きる平凡な人間なのである。

登場して間もないこのヒロインは、『地雷震』全体に非常に強い影響を与える。おそらく、この平凡な女性が街そのものを変えることも、相棒である響也を変えることもできない(実際、彼女にはその義務もない)。しかし、私たちが彼女を通じて、ほとんど希望を失ってしまった人間性の中に、わずかな光を見いだすことができた。そして、その光だけでも、この混沌と暗闇に満ちた世界の中で、かろうじて足元の道を見定める手助けとなる。

心の底から…… 高橋ツトムが相澤を登場させたのは、そのためであってほしい。

全視界アニメ&コミック情報誌 image(1999.9月号 Vol.2)に掲載

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