古亭佳味蘿蔔絲餅
グーティン・ジャウェイ・ローボースービン
子どもの頃から今まで、何十年も食べ続けてきた蘿蔔絲餅(細切り大根餅)だ。よく見かける餡餅(シェンビン)のように二、三センチはあるのに対して、これは一枚およそ1.5センチという絶妙な厚みで、ひと口ごとに生地と具のバランスがまさに黄金比になっている。皮の極限まで引き出されたサクサクした食感と、細切り大根の餡のやわらかくてほどよくみずみずしい食感、そして「うま味」「香り」「甘み」といった味の要素がすべて完璧に整っていて……自分の中では、これこそが台湾で一番うまい蘿蔔絲餅で、他に並ぶものはない。
今回の帰省でも、いつものように立ち寄るつもりだった。ところが、あの古い建物は柵で囲まれていて、壁には手書きの貼り紙が一枚あるだけだった。

手がかりをたどっていくと、数分もしないうちに見覚えのある屋台が目に入った。いつもは長い行列ができていた記憶とは違って、細い路地にはその屋台だけがぽつんとあり、店のおばさんは黙々と餅を焼いていて、周りには客の姿はひとりもなかった。

その場で思わず駆け寄り、蘿蔔絲餅を一つ注文した。あの手書きの貼り紙がちゃんと役に立っていたことに、おばさんもどこかほっとした様子だった。
「あの古い建物、取り壊すことになっちゃってね。だからあそこではもう屋台出せなくなったの。ここに移ってきたのもまだ二週間も経ってないし、移転のお知らせも三日しか貼らせてもらえなくて、今日で外さなきゃいけないのよ。」
「ここに来てから、ほんと誰も知らなくてね。この場所もいつまでいられるかわからないし、また追い出されるかもしれないし……あ、にいちゃんにいちゃん、ちょっと声小さくしてね。向かいの人が寝てるの、起こしちゃうといけないから。私もここじゃあんまり声出さないようにしてるのよ。」(そのときは午後三時くらいだった)

できたての蘿蔔絲餅(めちゃくちゃ熱い)をかじりながら、僕はおばさんに言った。「Googleマップの住所、ここに直しておくよ。写真も何枚か追加しておくね。」
Googleマップで場所を修正するには、新しい住所を「提案」するしかないようだ。
「住所は……」
屋台の向かいの建物には「13号」と書いてあるのに、こちら側にはまったく住所の表示がない。前後の番号を頼りに何とか住所を割り出そうとしてみたものの、どうにもつながらなかった。
「『羅斯福路二段15巷の中』って書けばいいのかな?それとも『羅斯福路二段15巷13号の向かい』……?」
細かいことが気になり出してしまって、気づけば手に持っていた餅もすっかり食べ終わっていた。隣にいる妻に意見を聞こうと振り向いたら、その間に自分があれこれ悩んでぐずぐずしているうちに、彼女はもう新しい写真を追加して、Googleマップに新住所を提案まで済ませていて、さらにはThreadsにまで告知を上げ終わっていた。
まずい!さっき買ったやつ、二口くらい分けるって言ってたのに……。
「……ごめん、さっきのやつ、気づいたら全部一人で食っちゃってた。もう一枚、買ってこようか?」
ちょっと後ろめたくなりながらそう聞くと、妻は呆れたような、でもどこか可笑しそうな顔で、今はあまりお腹が空いていないから一枚は食べきれないかも、と答えた。
いいじゃん、食べきれなかったらこっちで片付ければいいだけだ。そう言って、すぐに踵を返しておばさんのところへ戻り、もう一枚買い足した。さっきと違って、まわりには一人二人と他の客が並び始めていて、もう僕らが独占する屋台ではなくなっていた。
妻は受け取った二枚目の餅をひと口かじった瞬間、ぱっと目を輝かせた。どうやら、手伝う必要はなさそうだ。
パクパクと餅をかじる妻を横目に、自分は路地のあちこちを行き来しながら、屋台が写る写真をいろんな角度から何枚か撮り足して、あとでGoogleマップに追加する準備をしていた。その間にもぽつぽつと四、五人の客がやって来て、中には自転車で来て何個もまとめて注文する人もいて、どうやらわざわざ足を運んできた常連らしかった。
餅を焼くのに忙しそうなおばさんは、僕の顔を見るなり笑って、「あんたたち、福の神だねえ。さっきまであんなに暇だったのに、来てくれてから急にお客さんが増えちゃってさ」と言った。GoogleマップとかSNSとか、そういうのは自分じゃよくわからないから、こんなにいろいろ手伝ってくれて本当にありがたいよ、とも。

いやいや、お礼を言うべきなのはこっちのほうだ。帰るたびに、記憶の中の味がひっそり姿を消していたり、店が閉まってしまっていたり……あるいは味が落ちてしまっていたり、そんな現実を突きつけられることばかりだ。そんな中で、故郷を離れて長い年月が経った今でも、おばさんが半世紀近く守り続けてきたこの味を口にできるなんて……こんな贅沢な幸せがあるだろうか。
時間を見ると、そろそろ行かなきゃいけない頃だ。次は南機場で次の戦いが待っている。
妻の手に残った油で少しべたついた空のビニール袋を見ながら、さっきの餅、少し分けて食べられると思ってたのにな……と心の中でぼやく。ふと屋台の中に目をやると、きつね色にこんがり焼き上がって、ちょうど今まさに次の蘿蔔絲餅が引き上げられようとしているのが見えた。
……このまま立ち去る前に、三枚目を買ってしまうんだろうか。

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