1960年、「日本のディズニーを作る」と豪語した東映動画は、カラー長編アニメーション映画の第3作目となる『西遊記』を公開した。この作品は、手塚治虫の原作漫画『ぼくのそんごくう』を原案として東映が改編したものである。東映がこの企画を「マンガの神様」に持ちかけた際、幼い頃からアニメの夢を抱き、ディズニーをこよなく愛していた手塚が、この好機を逃すはずもなかった。東映の提案を快諾しただけでなく、自らもアニメーション制作に協力したいと意気揚々と申し出た。
しかし、この協力関係は決して順調とはいかなかった。手塚には手塚のこだわりがあり、東映にも守らなければいけないルールがあった。その上、マンガ事業がまさに全盛期を迎えており、日々の連載に追われていた手塚には、当時、アニメの制作チームと十分な意思疎通を図る時間など到底なく、最終的には制作の現場を離れざるを得なかった。

Ⓒ西遊記 / 東映アニメーション 1960
この『西遊記』公開から2年後の1962年。東映との仕事でよほど鬱憤が溜まっていたのだろう、手塚は誰にも邪魔されず、思い通りにアニメを作るため、とうとう自前のアニメスタジオ「虫プロダクション(虫プロ)」を立ち上げた。ある種、行き当たりばったりで設立されたようなこの会社の理念は、どうやら「作りたいアニメを作る」ことだけ。具体的な経営方針など皆無に等しかった。そればかりか、東映に不満を抱くアニメーターを高給で引き抜き、資金繰りが悪化して赤字が出れば、手塚の漫画の稼ぎをそのまま穴埋めに注ぎ込んでいた。
このままではいけない、自分たちの給料はやはり自分たちで稼ぎ出さなければならない。
虫プロの創設メンバーたちも、このような運営方式が長続きしないことは分かっていた。そこで彼らはボスである手塚に、テレビの普及率が急上昇している今こそ「テレビアニメ」という新たな戦場に打って出るべきだと提案した。これなら東映のような大手との正面衝突を避けられるだけでなく、未開の市場で先手を打つことができると考えたからだ。
当時のアニメは、映画のフレームレートに準じた「フルアニメーション(1秒24コマ)」が基準だった。つまり60秒で1440枚、1時間なら86400枚。1本90分の作品を作るには、通常2年以上の歳月を要した。そんな時代に、テレビアニメの「毎週30分」という要求は、業界からすれば笑えない冗談でしかなかった。この不可能な任務を成し遂げるため、手塚はアメリカの「リミテッド・アニメーション」の手法を「参考」にし、1秒間の平均コマ数を3コマにまで削減。工数を大幅に減らし、「週刊アニメ」を夢から現実へと引き寄せた。
しかし、どれほど工数を削ろうとも、「毎週30分を絞り出す」重圧は凄まじく、スタジオは文字通り戦場と化した。すべてのアニメ演出を自ら手掛けたがる手塚だったが、地獄のような漫画連載を抱えながらアニメの進行に合わせられるはずもなく、当然のごとく「総監督」へと退くことを余儀なくされた。放送開始に向けて十分なストックを確保するため、スタジオには何日も風呂に入っていないスタッフの汗臭い熱気と、長期にわたり蓄積された強烈な睡魔が充満していた。投入された新人は即座に最前線へと送り込まれ、中には撮影のためにフィルムを運ぶ途中で寝落ちし、いびきをかきながら車ごと溝に突っ込む者までいる始末だった。
1963年の元旦、テレビのあるすべての家庭に、動く『鉄腕アトム』が届けられた。当時の子供たちの心を鷲掴みにしただけでなく、最高視聴率40%以上を記録して社会現象を巻き起こしたこの作品は、日本のアニメ産業の未来を永遠に変えた。
『鉄腕アトム』の爆発的な人気により、日本はテレビアニメの戦国時代へと突入する。当初はこの作品を「電気紙芝居」と見下していた東映動画でさえ方針転換を余儀なくされ、シェアを奪うべくこの新戦場へと飛び込んだ。テレビアニメは未知の市場であり、業界にはまだ「相場」など存在しない。先陣を切った虫プロが、絶対的な主導権を握っていた。ここで、宮崎駿が著書『出発点 1979〜1996』で遺した言葉を引用したい。
昭和三十八年に彼は、一本五十万円という安価で日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」を始めました。その前例のおかげで、以来アニメの製作費が常に低いという弊害が生まれました。
「手塚治虫こそが、日本のアニメ業界をブラック化させた元凶である」という話は、実は何十年も前から耳にしてきたものだ。しかし、当時の「虫プロ」によるあの破天荒な暴走がなかったならば、日本のアニメ産業が今の形になっていなかったことだけは確かである。
その「今の形」が良いか悪いかはさておき、少なくとも私は、この何十年もの間、自身の成長に寄り添ってくれた無数の作品たちに深く感謝している。その一点だけでも、あの時代をただがむしゃらに突き進み、道を切り拓いてくれた業界の先人たちに対し、深い敬意を払うに値するはずだ。

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