2019 年 2 月 9 日、三連休の初日の夜。ある書店員がツイッターにこんな一文を残した――。
今、児童書売り場で、すごいことが起きてます。
『こんとん』
#偕成社夢枕獏が文を書き
松本大洋が絵を描いた
【絵本】が、ありますもう一度言います。
夢枕獏が文を書き、松本大洋が絵を描いています。 絵本です。… この凄さが伝わりますか?
その文章は、わずか三日ほどの間に 9000 回以上リツイートされた。三連休が明けた火曜の朝には、『こんとん』が全国のネット書店からきれいさっぱり「在庫切れ」となり、初版の発売からまだ一か月も経っていないうちに、出版社は早くも三刷の増刷を緊急発表することになった。
この書店員さんは、ツイートを投稿するときに、どこに焦点を当てるべきかをちゃんとわかっていたのだ。
「松本大洋」という名前は、一部のマンガファンにとって特別な意味を持っている。初期の『花男』や『鉄コン筋クリート』から、近年の『竹光侍』『Sunny』『ルーヴルの猫』に至るまで──1987 年のデビューから三十年以上、私たちはいまだに松本の作品を商業マンガのどのカテゴリーにもきちんと分類することができない。画風の表現、時代のテーマ、物語の構築や手法のどれを取っても、松本大洋は数えきれないほどの自己挑戦を通じて、創作という道の上で進化を続けてきた。その軌跡は読者にもはっきりと見えている。日本漫画家協会賞特別賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、そして手塚治虫文化賞マンガ大賞など、数々の栄誉に輝いた松本大洋は、現代の日本マンガ界において、欠くことのできない存在である。

そして夢枕獏は、まさに現代日本文壇の頂点に立つ巨匠と言っていいだろう。日本 SF 大賞、星雲賞、吉川英治文学賞など、数えきれないほどの文学賞を受賞し、さらに 2018 年には天皇より紫綬褒章を授与されている。その文学界での実績と地位は、まさしく疑う余地がない。
意外なことに、夢枕獏は同時に筋金入りのマンガオタクでもある。谷口ジロー(『神々の山嶺』)、板垣恵介(『餓狼伝』)、岡野玲子(『陰陽師』)といった実力派のマンガ家たちとも数多くコラボレーションを重ねてきた。なかでも日本国内で最もよく知られている代表作『陰陽師』シリーズは、全世界で累計 800 万部を突破し、狂言師・野村萬斎が主演した映画版は当時、興行収入 30 億円という大ヒットを記録した。

夢枕獏が文を書き、松本大洋が絵を描いています。
… この凄さが伝わりますか?
疑いようもなく、これは歴史に刻まれるほどの、まさに神話級のコラボレーションだ。当初その出版の知らせを聞いたときには、あまりの興奮で鼻血が出そうになったほどだった。さらに驚いたのは、彼らが題材としてえらんだのは、中国の古代伝説に登場する「渾沌(こんとん)」だった……。
では、「渾沌」とは一体何なのだろうか。『論衡』では「元気未分、渾沌為一」と解説されており、天地がまだ形成されていない時、元気が分かれず、ぼんやりと混然一体となった状態を指す。これに対して、『左伝』『山海経』『神異経』といった他の古典では、「形は黄袋のようで、六本の足と四つの翼を持ち、目はあるが見えず、耳はあるが聞こえない」とされる異獣として描かれている。『左伝』では四凶の一つに数えられ、『山海経』では黄帝の子として暗示され、『荘子・応帝王』では悲劇の主人公を演じる存在として登場するのである。
南海の帝を儵(しゅく)と為(な)し、北海の帝を忽(こつ)と為し、中央の帝を渾沌と為す。
儵と忽と、時に相与(あいとも)に渾沌の地に遇(あ)ふ。渾沌之を待(じ)すること甚(はなは)だ善(よ)し。
儵と忽と渾沌の徳に報(むく)いんことを諜(はか)りて曰はく、
『「人皆七竅(しちきょう)有りて、以て視聴食息(しちょうしょくそく)す。此(こ)れ独り有ること無し。嘗試(こころ)みに之を鑿(うが)たん。』と。
日に一竅(いちきょう)を鑿ち、七日にして渾沌死す。
華語文化圏で育った読者にとって、この寓話はさほど馴染みのないものではないだろう。天地万物にはそれぞれ本性があり、渾沌の死は、耳・目・鼻・口の七つの竅(けつ)が分化することを意味する。儵・忽の二帝は、渾沌の徳に報いようとしたのだが、善意からの行為でありながら、その「本性」を破壊してしまった──善意による渾沌の殺害とも言えるだろう。荘子はこの物語を通じて、「天道に従う」という核心思想を説いているのである。
二人の巨匠は、このわずか七十余字の物語をただ忠実に再現しただけではない。夢枕獏のこの作品における文章には、不思議な霊気とリズム感が宿っている。読者は無意識のうちに、感情を「何者でもない」けれども「いつも空を見上げて笑っているあいつ」であるこんとんに自然と重ね合わせることができる。そして松本大洋の繊細でありながら大胆な筆致に導かれながら、私たちは作品を読み進める間、まるでそよ風のような暖かさに包まれているかのような感覚を味わうのだ。
多くの人は、「絵本」は低年齢層向けの読み物だと考えるかもしれない。確かに、子どもは「物語」の理解力において大人には及ばない。しかしだからこそ、絵本の創作者はより多くの心力を注ぎ、作品で最も伝えたい核心を、読書の過程での「体験」として変換する必要があるのだ。夢枕獏と松本大洋が『こんとん』を通して私たちに届けてくれる、あのそっとした柔らかさ、ほのかな幸福と悲しみは、他の作品では味わったことのない体験である。こうした体験は、あらゆる年齢層の読者の心を動かすに違いないと、私は信じている。
迷誠品(2018/10/09)に掲載

コメントを残す